パートのよくある悩みを解決

ものつくりの多くは中間生産部門にあり、その活動の水準は、最終需要の水準によって大きく規定される。 最終需要の多くは消費者の消費活動である。
言い換えれば、最終需要が高まれば中間生産が活発化する。 印象的に言えば、経済は、人々の消費が高まればものつくりも活発化するという循環構造になっているということである。
それでは、戦後日本の高度成長はどのようなメカニズムで実現したのだろうか。 ものつくり産業の高い競争力によって輸出が増え、外需主導で経済成長が加速し持続したことは周知であるが、そのメカニズムは大局的にみると、日米の連関構造の中で、アメリカの消費需要の増大が日本のものつくり産業の発展を促し、それが日本経済の高度経済成長を実現する上で大きな役割を果たしたことが分かる。
ところが、その状況が近年、急速に変容してきた。 一言うまでもなく、中固など低コスト諸国の発展によって、それまでの国際的な生産と分業の構造が大きく変貌することになった。
為替レ−ト構造の変化もあって、日本国内の生産コストが国際的に大きく上昇し、高齢化、成熟化の下で、日本のかつての競争力が失われてきている。 日本の生産資源が、中固など新しい活力を持った地域に移動してきており、日本の産業構造がアメリカの消費を支える構造は著しく変化した。
言い換えれば、アメリカの消費を支える主たる役割は、日本ではなく中国が果たしているということである。 中国の輸出の少なからぬ部分が、日本の対中国投資による日本発のものつくり産業によって担われていることにも留意すべきである。

いずれにせよ、アメリカの消費はいまや中国が満たす時代になった。 いまこそ需要創出引の構造改革を日本国内のものつくりへの需要がこれまでより大きく減ってくることは避けられない。
もちろん、国際競争力のある特異な技術や強い比較優位のある分野では、依然としてものつくりは健在だが、かつてのように大量に雇用を吸収する力は当然、失われていく。 つまり、アメリカの消費を満たす工場としての日本のものつくりのあり方は歴史的に終駕したとみ・なくてはならない。
そうした構造の下では、そうだとすれば、日本の新しい発展の方程式はどこに見いだせばよいのか。 それは、これまで日本国内でなおざりにされてきた日本の消費、私たち日本国民の消費に着目すること、私たちが求めている生活者のための多様で便利できめの細かいサービスが幅広く潤沢に提供され得るような経済社会を構築することにある。
そうした最終需要の掘り起こしと活性化が、経済循環を通じて日本のものつくり産業をも活性化するのである。 例えば、高齢者のケアサービスを充実することは、施設建設や人材育成の需要を生み、医療や健康守つくり支援サービスの充実は、病院などの施設だけでなく、医療技術、基礎医学など科学技術の発展や健康にかかわる多様な産業の発展を促進する。
子育て支援も同様である。 住宅サービスの充実は、耐久性、安全性、断熱性、効率性、経済性に関する多くの技術進歩を誘発するだろうし、地域交通システムの整備は、車やインフラだけでなく、安全や運行管理や通信などに関する技術革新を促進する。
さらに観光の発展は、宿泊施設だけでなく、レストラン、交通システム、食材、スポーツ、娯楽など広範な分野で関連産業の発展を促す。 つまり、サービスの発展はものつくりゃ産業技術の振興を促進するのである。
一方、日本からはこれまでに企業や産業だけでなく個人の資産なども含めて、多大な経済資源が世界各地に投資されてきたし、これからますますその傾向が強まると見込まれている。 こうした経済資源の海外への蓄積はますます増加すると考えられるが、それはやがて海外からの収入として日本に環流し、日本国民の生活水準を維持する上で二疋の役割を果たすことになる。
従って、過去の輸出立国とは大きく異なるこれからの世界経済における日本経済のあり方が構築されつつあり、圏内におけるサービス産業の促進と発展は、そうした新しい構図をも支えるものとなるのである。 いまこそ需要創出型の構造改革を小泉政権が推進する「五三O万人雇用創出プログラム」の内容を説明するのが本書の主たる目的だが、政府が現在、取り組んでいる「プログラム」の前提もしくは下敷きとして、二OO一年の春に経済財政諮問会議のタスクフォ−スが提案した「五三O万人サービス雇用創出構想」がある。
まず、その経緯から説明しよう。 経済財政諮問会議では、牛尾治朗民間議員を中心として、経済構造が激しく変化し、一方で製造業雇用の海外流出など雇用機会の縮小傾向が明らかになっていく中で、将来の経済構造を見据え、これから伸びる可能性のあるサービス産業を中心として、雇用創出を積極的に推進する政策を展開すべきだ、という問題意識があり、そのための特別なタスクフォ−スを設け、検討することになった。
タスクフォ−スは筆者が座長となり、樋口美雄慶麿大学教授、大田弘子政策研究大学院大学教授(当時、現内閣府審議官)などの専門家や政府関係部局ならびにマツキンゼ−杜などのシンクタンクの協力を得て数カ月の集中的な調査研究を行い、二OO一年五月一一日に「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する経済財政諮問会議専門調査会報告」を発表した。 旧労働省は確かに雇用問題を管轄する役所であり、雇用を守る政策手段は持っているが、残念なことに、産業をつくる権能も政策手段も与えられていない。

そこで産業創出に多少ともかかわりのある府省が動員されたわけである。 このチ−ムは約一00日間の集中的な作業を行って、生活者サービスの各分野にわたって政府が政策的に支援することができる雇用創出の数値目標を定めた。
労働者に対する支援が雇用創出のための数値目標を掲げ、その数値を実現するための具体的な政策手段を明示している。 図の下段には、そうした雇用創出を支えるための、情報提供やマッチングなど労働市場整備の政策や、労働力のタイプ別の雇用促進支援政策などが記されている。
この「プログラム」は、二OO三年六月に発表されたいわゆる「骨太改革」政策パッケージの中核に据えられた。 さらに二OO三年一一月の総選挙では、政府与党の「マニフエスト」における経済活性化戦略一一一項目の事実上のトップ項目に掲げられ、政府の国民に対する公約とされたのである。
「プログラム」の内容については、そのサマリーが、本書の巻末に掲載されている。 次章以下では、この「プログラム」や「構想」が掲げている多くの分野のうち、特に生活者の関心の深いいくつかの分野、すなわち高齢者ケア・子育て支援サービス、医療・健康づくり支援サービス、住宅サービス、地域交通(生活者移動支援サービス)、観光促進政策につき、政府のユニークかつ具体的な取り組みをやや詳しく紹介することにしたい。
人口の高齢化が進んでいる。 高齢化の度合いを六五歳以上人口の増加数でみると、現在は年間一OO万人ほどだが、そのベ−スは今後いっそう速まり、一O年後には二OO万人にも上ると予測されている。
このように高齢者が増加すれば当然、高齢者ケアの社会的需要も増える。 例えば、要介護者は二000年四月には一二八万人だったが、一年後二五八万人、二年後三O三万人、三年後の二OO三年には三四四万人と、まさにうなぎのぼりの増え方である。

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